2011年5月30日月曜日

山本晋也




子供のころ盗み見して、ときめいていた11PMよりも、ずいぶん大人になってからだったがトゥナイトという深夜帯の番組があった。
11PMの路線をもっと夜の大人向けにしたようなものだったと記憶しているが、このとき歌舞伎町界隈などの性風俗を中心にレポートして注目を集めていたのがこの人。山本晋也監督であった。
監督と呼ばれるとおり、もとは映画監督なのだが、日活ロマンポルノなど、成人向け映画を得意としていた彼らしく、性風俗のお店に行き職場の風俗嬢相手に取材したり、ラヴホテルに突撃、利用者カップルに直接インタビューする等の設定は当時TVの企画としては大胆で良く覚えている。
ソープ嬢に、「あなたのお仕事は?」と問いかける彼に、「厚生省認可の福祉事業です」とあっけらかんと答えを返す彼女たち、こういう時代なのだと感心する山本晋也監督。
働く目的も、ブランド品を買うため、もっとおしゃれを楽しむため・・・
そこには、かつての病気の親を抱え進学も諦め、田舎を離れて働く悲哀に満ちたソープ嬢の姿は微塵もなかった。
時々の社会の断面を切り取り、大衆に再確認させることが映画監督の重要な務めの1つであるとするならば、こうしたコメントから社会を映し出す彼の手法もまた、映画でこそないが、監督のお仕事に違いなかった。
人間の性ほど要望、趣向が多様で、もともと規範が不明確、正常とか異常とかの判別のつきにくい分野は社会に存在しない。こうした問題に直面したとき、男女のカラミを撮ってきた山本監督の柔軟な感性はきらめいていた。
「ほとんと、ビョーキ」という、当時、流行語にもなった言葉は、人間の性をテーマにしてきた監督だからこそ、自然に吐けたフレーズであり、プライベートな性は他人から見たらビョーキであっても、それもまた良しとする人間味のある山本哲学の真髄ではないか。そんな風に思える。
あまり映画を撮らない映画監督が時折、社会を鋭く斬ることがあるが、この人もコメンテーターとして今でも、ひっぱりだこのようだ。
風貌も性格も今で言うチョイワル親父風でもあるが、もともとC調な性格というよりも、裸の付き合いによる豊かな人間経験が、彼独特の鋭さと優しさを生んだのではないだろうか。とぼけた顔はしているが、切れ者だと私は思う。
NHKの寅さんシリーズの解説が出来るようなポルノ監督は、彼しかいまい。

 



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