2011年5月6日金曜日

X-15




車でも飛行機でも、あまりに速いと速いとは感じなくなる瞬間がある。
もはや飛行機なのかさえ定かでなくなったX-15はそんな枠を超越している機体だったといえよう。
もうこれ以上は揚力で飛ぶよりも、人工衛星のように地球の周回軌道に乗ってしまいそうな勢いを感じるからである。
実際に記録した速度はマッハ6.7、最大到達高度は107.960kmであったというから第一宇宙速度には達しないが、すでに航空機の最高速度でも運用高度でもないことは容易に想像される。
当時は東西冷戦の時代だから、当然、開発費が軍事からの支出でまかなわれていたことは想像に難くないが、こうした実績の積み重ねの中からスペースシャトルにつながる技術も醸造されたことを考えれば、科学技術は純粋に技術であって軍事も民事もないことも理解できようか。
また最初に車でも・・・と書いたが、ソルトレークシティのボンネビルで行われる世界一速いという車の世界も、もはや車というにはあまりに異次元の様相を呈していて、横向きのロケットというにふさわしい。
速さは重力から開放されたとたん、生身の人間にとって速いという感触から脱することを意味しているのかも知れない。宇宙では、超音速くらいではナメクジよりも遅い歩みにしか見えないということだろうか。
  
 

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